「アンティカ・ティンダリ」に見るシチリア土着品種と日本料理の愉しみ

2026年7月21日、南イタリア・シチリアの知られざる実力派ワイナリー「アンティカ・ティンダリ」(Antica Tindari)のワインを日本市場へ紹介し、新たな輸入代理店を募るためのプレゼンテーションディナーが開催された。当日の運営は、イタリア食文化の普及に尽力する「ソロイタリア」(林茂代表)が手掛け、東京・神田明神下みやびの日本料理とシチリア土着品種のワインが織りなすマリアージュが披露された。

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シチリア東北部、エトナ山とパッティ湾の間に位置するアンティカ・ティンダリは、ミセス・ピナを中心に標高385mのブドウ畑で環境に配慮したワイン造りを行うワイナリーだ。アグリトゥリズモやレストランも経営し、食とワインの完全な融合を追求するその姿勢は、古代から続く土地の歴史や自然への深いリスペクトに満ちている。今回のイベントでは、同社の哲学を体現する4つの個性豊かなワインと、神田明神下みやびによる繊細な日本料理との共演が参加者を魅了した。

大地と海の恵みを映す白ワインの競演

宴の幕開けを飾ったのは、マルヴァジア品種で仕込まれる「“Migrante” Malvasia IGP Terre Siciliane 2023」。グラスからはレモンやグレープフルーツを思わせる生き生きとした柑橘系の香りが立ち上り、口に含むと穏やかな酸味とジャスミンのような上品な果実味が優しく広がる。このワインには、前菜として供された北海道産殻付き紫雲丹やいくらが合わせられ、さらにノルウェー産スウェラックスサーモンの香草マリネ、天草の巻海老、瀬戸内の障泥烏賊の天ぷらへと見事な調和を見せた。素材の甘みと磯の香りが、ワインの持つ華やかなアロマと上品な果実味によって見事に引き立てられていた。


続いて提供されたのは、インツォリア品種による「Inzoria IGP Terre Siciliante 2025」。先ほどのマルヴァジアに比べ、より落ち着いたシトラスの香りを持ち、味わいはきりっとしたシャープな酸味とミネラル感が際立つ仕上がりとなっている。このストラクチャーのしっかりとした白ワインには、岩手の若鮎のコンフィが合わせられた。鮎特有のほろ苦さと川魚の芳醇な旨味を、インツォリアの美しい酸が見事に洗い流し、次の一口へと誘う素晴らしい相性を見せた。

歴史とロマンを纏う赤ワインの深淵

3番目に登場したのは、有名オペラの名を冠した「“Dongiovanni” Nocera IGP Terre Siciliane 2019」。ネレッロ・マスカレーゼの系統とされるノチェーラ種は、通常ブレンド用として使われることが多く、単一100%でのボトリングは珍しい。林茂氏の解説にもあった通り、夏場にも心地よく楽しめる軽やかなスタイルの赤ワインだ。イチゴやラズベリーを思わせる軽やかな香りに、滑らかな口当たりとやわらかなタンニン、エレガントな果実味の余韻が残る。これには三重の穴子と伏見唐辛子の天ぷらが合わせられ、繊細な赤ワインのニュアンスが穴子のふんわりとした身と絶妙に寄り添っていた。


この日は、ネロ・ダーヴォラ60%、ノチェーラ35%、ネレッロ・マスカレーゼ5%をブレンドした「“Imperium” Riserva DOC Mamertino 2019」を待ちわびていた気がする。古代ローマのシーザーも愛飲したとされる「マメルティーノ」の伝統を引く一本だ。ブラックカラントやブルーベリーの黒系果実に、カカオやシナモンの複雑なニュアンスが重なる。味わいは堂々たるフルボディでありながら、凝縮した果実味と滑らかなタンニン、そして長く続く優雅な余韻が印象的である。この力強いワインを受け止めるべく用意されたのは、茨城常陸牛A5サーロインを用いたイチジク巻きの冷しゃぶ、そして浜名湖の鰻を使った石鍋鰻重。ネロ・ダーヴォラ由来の上品な濃厚さが肉の旨味や鰻の脂と見事に調和し、互いの魅力を高め合った。

日本市場への確かな手応え

シチリアの豊かな太陽、海風、そして家族の情熱が育んだアンティカ・ティンダリのワイン群。今回のプレゼンテーションでは、土着品種の個性を生かしたワインの多様性が、和食という繊細かつ多様な食文化のなかでこそより一層輝きを増すことが証明された。イタリアワインの新たな可能性を感じさせるアンティカ・ティンダリの日本上陸に向け、今後の動向に注目したい。


“Migrante” Malvasia IGP Terre Siciliane 2023
“ミグランテ” マルヴァジア IGP テッレ・シチリアーネ

品種マルヴァジア
色麦わらを帯びた黄色い色調
ブーケ風味が控えめで、フルーツや花の香りが漂う
味新鮮で洗練され、調和があり、よく構成されている
ボリューム12% vol
マッチング食前酒としても、繊細な魚や貝類の料理にも

ステンレスタンクで貯蔵の後、瓶内でのさらに熟成


Inzoria IGP Terre Siciliane 2019
インツォリア IGP テッレ・シチリアーネ

品種インツォリア
色鮮やかなカラーワイン、麦わらのようなイエローのトーン
ブーケ心地よいフルーティーな香り
味濃厚でバランスの取れた味わい
ボリューム12% vol
マッチング繊細な料理、チーズ、魚料理に最適

畑は砂地や粘土質の土壌で、8月の最終週から9月1週までの間に手作業で収穫。醸造後はステンレスタンクで3カ月貯蔵し、瓶内で1カ月間熟成


“Dongiovanni” Nocera IGP Terre Siciliane 2019
“ドンジョヴァンニ” ノチェーラ IGP テッレ・シチリアーネ

品種ノチェーラ
色濃いルビーワインと赤紫色の反射
ブーケ清らかで洗練された香りと、花の香り、フルーツ、繊細なスパイシーな香りが特徴
味口当たりは、ベルベットとエレガントなタンニンで中心的な位置を占めている
ボリューム13%~135%、すべて
マッチング生パスタ料理(ラビオリなど)に、繊細なソースやフィリング、ベール、白身肉にも。野菜と新鮮なチーズ、または味付けされたチーズとの興味深い組み合わせも

酸味、糖分、そしてアントシアニンやポリフェノールの最適なバランスを得るのに最も適した時期である9月下旬から10月初旬にかけて手摘みで収穫。これは、私たちの家族が再発見した、この古くから伝わる土着品種のブドウ。ステンレスタンクでその風味や特性を最大限に引き出した後、ワインは6~8カ月間瓶内熟成される。


“Imperium” Riserva DOC mamertino 2019
“インペリウム” リゼルヴァ DOC マメルティーノ

品種ネロ・ダーヴォラ60%、ノチェーラ35%、ネレッロ・マスカレーゼ5%
色ダークルビー
ブーケ赤い果実、シナモンやココアのほんのりとした味わい
味フルボディの風味が口いっぱいに広がり、その後に濃厚なベルベットのようなタンニンが続きます
ボリューム13 %~14% vol
マッチングコースのパスタ料理やスープ、煮込み肉、ロースト、焼き肉、味付けチーズの風味が抜群

9月の第3週から第4週にかけて手摘みで収穫。ネロ・ダーヴォラをわずかに過熟させることで、ノチェーラやネレッロ・マスカレーゼとの完璧なバランスを実現。
ステンレスタンクで風味を最大限に引き出した後、バリックで12カ月間、さらに瓶内で少なくとも6カ月間熟成。



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