
シチリア南部の伝統を反映させる「グリエリ」
和食との相性示すガイドブックも
南イタリア、シチリア南部のワイナリー「グリエリ」は、神田明神下みやび(東京・神田)を会場にプレゼンテーションディナーを4月21日に開催。天ぷらを主とした日本料理と同社ワインの相性の良さを示した。

グリエリはシチリア州の南側、キアラモンテ・グルフィに拠点を置くワイナリーで、かつては50年にわたり食用ブドウやオリーブの栽培を行なってきた。農業に情熱を注ぐ父ヴィンチェンツォと母グラツィエッラを見ながら育った息子ジョヴァンニと娘アンジェラは、従来の農業に加え、生まれ育った土地のアイデンティティを表わすワイン造りという新たな夢に向けて舵を切り、2010年にファーストヴィンテージをボトリングした。
イブレイ山地の麓に広がる肥沃なヴァル・ディ・ノートの田園地帯、シチリア唯一のDOCGであるチェラスオーロ・ディ・ヴィットリアの生産地域にワイナリーはある。最新の醸造設備を導入し、キアラモンテ・グルフィと隣接するマッザローネで3.2haの畑から近代的な手法でのワイン造りを開始。さらにこの地区のテロワールを示すのに適した畑を探し、新たにキアラモンテ・グルフィに3haの畑を借りた。
標高270~300mの丘陵地帯に広がるブドウ畑では、白亜の粘土質主体の斜面に沿って列が作られ、白い石垣が豊かな景観を生み出す。乾燥した風が吹き抜け、昼夜の気温差が大きい地中海性気候はワインに力強さ、アロマと独特の風味を与えているという。両親に敬意を表して、チェラスオーロ・ディ・ヴィットリア・クラシコを父に捧げて「ドン・ヴィーチェ」、同じぶどうから造る白やロゼ、スパークリングワインを母に捧げて「ドンナ・グラツィア」と名付けた。
日本料理と合わせたプレゼンテーションは瓶内二次発酵スパークリングワインの「HIC EST XXII Metodo Classico Brut」からスタート。「北海道産毛ガニと山菜」に掛けられた蟹酢と鼈甲餡のジュレに対して、2種類の黒ブドウ、ネロ・ダーヴォラ、フラッパートからなる奥行きのあるフレーバーが親和性を感じさせるスターターに期待は膨らんだ。

続いて北海道産桜鱒の西京焼きには「Grillo Sicilia DOC 2023」が供された。フローラルやトロピカルフルーツを伴うグリッロの豊かな風味と、実鞘えんどうの焦しバターソースの調和が見事なペアリング。天草の巻き海老と神奈川のクレソンの天ぷらにネロ・ダーヴォラ、フラッパートによる白ワイン「Donna Grazia Bianco」が供されたのを経て、チェリーやザクロ、ラズベリーなどのフレッシュな赤い果実感がみずみずしいフラッパート100%の「Frappato Terre Siciliane IGT 2023」には黒毛和牛の肉吸い。さらにシチリア唯一のDOCGである「Cerasuolo di Vittoria DOCG 2021」が続いた。60%のネロ・ダーヴォラと40%のフラッパートによる力強さと優美さのバランスに富み、長い余韻が続くワインだ。
グリエリは昨年、同社のそれぞれのワインと和食との相性を示したカタログを制作。これは『和食で愉しむイタリアワイン』(2018年、万来舎)を執筆するなど長年、イタリアワインと日本の食文化の共鳴を説き続けているソロイタリアの代表、林茂氏が監修して作られたもの。
現在では畑をすべて有機栽培に転換し、ネロ・ダーヴォラ、フラッパート、グリッロなどの土着品種と、シチリアの土壌と気候によく適応した国際品種であるシラーも栽培しているグリエリだが、それぞれのワインは2000~4000本程度と少量生産でラグーザ地方の農業と地域の伝統を反映させている。

この会は林茂氏によるソロイタリアが運営、グリエリのワインを輸入・販売するアプレヴ・トレーディングの協賛によって行なわれた。