海と山の恩恵を受けて ビオディナミを実践する
アンティカ・テヌータ・ピエトラモーレ生産者来日

 イタリアのアブルッツァ州キエーティを中心に、ビオディナミのワイナリーを展開するアンティーカ・テヌータ・ピエトラモーレ社。2014年にはDemeterデメターのビオディナミの認定を取得し、70haの畑で葡萄栽培に励んでいる。いまやビオディナミはワイン選びのひとつのキーワードともなるが、そこには生産者の哲学と信念が宿る。7月にピエトラモーレ社のオーナー夫妻が来日。林茂氏代表のソロイタリアが運営しプレスディナーを開催。果実感の美しさ、酸の伸びやかさ、品種の個性を活かし、かつコストアフォーマンスにすぐ入れたビオディナミワインを披露した。

自然と大地への深い敬意 海と山からの風の恩恵を受けて

 まず、アブルッツォ州とはどこにありどのような気候風土なのだろうか。イタリアの国土は長靴の形に例えられるが、アブルッツォはその”ふくらはぎ”の下当たりに位置する。西にはアペニン山脈最高峰標高(2912m)のグラン・サッソ山塊があり、東はアドリア海に面している。そのため海から吹く風と山から吹く風の両方の恩恵をうけ、葡萄には最適な昼夜の寒暖の差のある気候に恵まれ、美しい酸と豊かでエレガントな果実味を持ち合わせたワインが生まれる。

 妻のマリア・ピア・レーネさんは、「私たちはアブルッツォの美しい自然と大地に敬意を払い、自然の流れに添った葡萄栽培を行いたいと思い、創立当初からビオディナミを実践してきた。ワインは生きたものでないといけない。いい葡萄ができなければいいワインもできない。そしてワインはその土地の個性が豊かに表現されれなくてはいけない。そのためにもヴィオディナミは畑の個性や素晴らしさを活かし、生きたワイン造りをもたらしてくれる栽培法だ」と笑顔で語った。

樹齢の高い10haの畑からビオディナミをスタート マメ科の植物を堆肥に

 ピエトラモーレの歴史は2011年、アブルッツォ南部のキエーティにある10haの樹齢の高い葡萄畑から始まった。すでにチウチウやコスタドーロでビオロジックの経験を積んでいた夫のマッシミリアーノ・バルトロメイさんは、さらに進化したビィオディナミを選択。14年にはDemeterデメターの認証を取得。現在は畑を広げ、キエーティとテラモの70haの葡萄畑でビィオディナミを行なっている。葡萄畑の畝間には窒素分を豊富に含むマメ科の植物を植え、害虫対策や土にすき込んで堆肥とする緑肥としても利用している。

月の満ち引き宇宙の運行に従って栽培 各土壌に合わせた葡萄を厳選

 ビオディナミには欠かせない牛糞、シリカ、ハーブなどの調合物の散布などを始め、畑での作業は月の満ち引きや天体の運きに則したビディナミカレンダーに従っている。発酵はすべてステンレスタンクのみで、畑に自生している天然酵母を用いて、緻密な温度管理の下で行うことで、オーガニックワインにありがちな、いわゆる「ビオ臭さ」を感じさせない、美しい味わいのワインを造りだしている。

 葡萄は土壌との相性を考えて植えられており、粘土質主体のテラモの畑には黒葡萄のモンテプルチィアーノが。石灰質やミネラルを豊富に含むキェーティの畑にはトレッビアーノ、ペコリーノ、パッセリーナなどの白葡萄が植えられている。葡萄の平均樹齢は40年と高く、植栽密度は1ha当たり2000~3000本と少なく、収量も1ha当たり4tに抑えられている。

和食と好相性 ラベルにはビオディナミを象徴する星座や鉱物を描く

 当日試飲したワインは4種。神田明神下みやびの会席料理と合わせて供されたが、ビオディナミの酸と果実の美しさが繊細な和食にとてもよく合っていた。またワインラベルが大変特徴的でそこにもビオディナミに対する想いが込められている。ピエトラモーレでは、ワインは宇宙や地球の運行、そして土壌から生まれるものであることから、それらに対する敬意をラベルに表している。トレッビアーノにはこぐま座、ペコリーノにはケフェウス座、モンテプルチァーノにはカシオペア座を描き、各葡萄品種が生まれる畑の鉱物の色彩をイメージして描いている。さらに天然の蛍光塗料を施し、暗闇ではそれらが浮かび上がるように工夫している。


ヴィーノ・フリッツァンテ”メトド・アンチェストラーレ”コッリ・アプルティーニIGP

ブドウ品種:トレッビアーノ100%
参考小売価格:2500円

 微発砲でSO2無添加のワイン。酸がしっかりとあり、アロマも豊かでガス圧も適度にあって非常に心地よい味わい。食中酒にもよく合う旨味や深みもある。葡萄は9月上旬に手摘みで収穫。除梗し8~9時間低温で静置後ソフトプレス。得られた果汁の一部を抜き取り、天然酵母で発酵。残りの果汁は温度を0℃に保ちながら、発酵途中の果汁とブレンドし瓶詰め、残りの発酵を瓶内で行い、微発砲性のワインに仕上げる。


アブルッツォDOPペコリーノ・スペリオーレ2019

葡萄品種:ペコリーノ100%
参考小売価格:2500円

 ペコリーノのワインは近年非常に人気が上がっていて、アブルッツォ州でも栽培面積が10年前の3~4倍になり、接ぎ木で増やす生産者が増えているという。その背景にはアロマがあって旨味もあるワインを生むこと。また若いうちだけでなく、熟成しても美味しいこと。魚介類だけでなく鶏や豚肉にも合うふくらみがあること、などがあるという。和食ともよく合い当日は若鮎や鱧との相性も大変よかった。

旨味があり凝縮感もある味わい。色調が濃く、黄色い果実、アーモンドの香りをもつ。いいワインを造りには完熟した葡萄が大切だが、慎重に葡萄を選び抜いているという。ソフトにプレス後8~10時間マセラシオンを行い、ステンレスタンクで16℃前後で発酵、シュール・リーで静置後3か月以上瓶熟成。2016年と2018年にはニューヨークタイムスで、イタリアの優れた3つのワインのひとつに選ばれている。


トッレビアーノ・ダブルッツォDOPスペリオーレ2019 

葡萄品種:トッレビアーノ100%
参考小売価格:2500円

 アブルッツォといえばトッレビアーノのワインだ。とはいえこのワインは樹齢50年の古木の葡萄樹から生まれ、一般的なトレッビアーノのワインとは違うという。7年以上の熟成にも耐えられるワインでアルコール度数も14%。しっかりとした骨格と深みをもち気品ある風味をもつ。ソフトプレスした後、果皮とともに8~12時間マセラシオン。その後果汁のみをステンレスタンクにて16~17℃に保ちながら発酵。オリの上で静置して、瓶内で最低3か月熟成。


モンテプルチャーノ・ダブルッツォDOP2019

葡萄品種:モンテプルチャーノ100%

 とてもエレガントに造られたワイン。元々個性が強くて力強い葡萄で、やんちゃな葡萄をどうコントロールして土地の個性を表現するかが課題だったそうだ。普通に10年ぐらい熟成できるワイン。粘土質土壌の葡萄を手摘み収穫。開放桶で足踏みでプレス、その後タンクに移し24~26℃に保ちながら7~15日間マセラシオン。途中凝縮感を高め色合いを美しく出すために果汁を15~20%抜き取る。発酵終了後タンクで6カ月以上、さらに2カ月以上瓶熟成する。

主催:Antica Tenuta Pietramore

運営:SOLOITALIA 協賛:アプレヴトレーディング(株)

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