ソアーヴェの新たなアイデンティティ
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ONE SOAVE
ソアーヴェの歩みは地球の歩みだ

 地球史レベルでの歴史的背景による土壌と気候、生産者ごとのワイン造りに込めた思いの掛け算により、ソアーヴェワインの多様化が飲み手に楽しみを提供している。その一方で、イタリア最大のワイン生産量を誇るヴェネト州を代表する産地としてのソアーヴェは方向性を一つに定め、これからの地球とワインのあり方のベンチマークたり得ようとしているのではないか。

養蜂とともに土中生物の多様性を受容しながらブドウ栽培、ワイン造りを進めるバレストゥリ・ヴァルダ。日本への本格的な供給に期待したい

 ソアーヴェワイン保護協会の主導による循環型社会への対応はその大きなかじ取りの一つとして見ると実に分かりやすい。いわゆる有機栽培をはじめとする環境保全を前提としたブドウ栽培はその一部に過ぎず、生産者によっては生物多様性に言及した企業活動としてのワイン造りがすでに実践されている。産地の各所で土壌および水質の検査が継続的に行なわれ、ソアーヴェ・クラッシコのエリアに拠点を持つバレストゥリヴァルダ(Balestri Valda)は1ha当たりのブドウの収穫量を少なくすることを念頭に栽培するだけでなく、化学物質に反対し有機的なブドウ栽培の原則に従ってオリーブの木を育て、生態系との調和を重んじて養蜂を始めている。彼らが造り出す「ソアーヴェ・クラッシコ ヴィニェト・センジャルタ」(Vigneto Sengialta)には、蜂を模したラベルだけでなく香りや濃密で余韻の長い味わいにその思想が表われている。

 コッフェレ(Azienda Agricola Coffele)は有機栽培、生物多様性、CO2削減など多面的に地球環境と向き合ったワイナリーだ。約25haでブドウを栽培し、ソアーヴェ・クラッシコ地域で最初に欧州のオーガニック認証を受けたワイナリーである。さらに敷地内では牛や馬、ヤギや羊を育てている。彼らは単に雑草を刈り取るだけでなく、農園内の立派な労働力にもなっている。そしてもちろん、コッフェレのワインがこの土地が育んだミネラルと豊かな酸による特筆すべきワインであることも伝える必要がある。

 

 フィリッピ(Cantina Filippi)も彼らの土壌をワインに反映させることに長けたワイナリーだ。前述の玄武岩から石灰岩までそれぞれの畑に多様な土壌を持ち、土地のポテンシャルを見事に抽出したワイン造りがなされている。

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