ソアーヴェの新たなアイデンティティ
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世界農業遺産でワイン造りの評価が変わる

 産地としてのソアーヴェは環境に寄り添うワイン造りにとどまらず、彼らのビジョンはこれからのワイン造りのグローバルリーダーになることではないか。ソアーヴェはいま、イタリアで初めて世界農業遺産を地域として認定されようとしている。(*注:2018年11月に世界で53 番目、イタリアで初めてのブドウ栽培に関する農業遺産として認定された)
 世界農業遺産は、世界的に重要かつ伝統的な農林水産業を営む地域(および農林水産業システム)を国際連合食糧農業機関(FAO)が認定する制度。2018年7月現在で世界21カ国52地域、日本では 「静岡水わさびの伝統栽培」(静岡県わさび栽培地域)、「トキと共生する佐渡の里山」(新潟県佐渡市)、「清流長良川の鮎」(岐阜県長良川上中流域)など11地域が認定されている。①食料及び生計の保障 ②農業生物多様性 ③地域の伝統的な知識システム ④文化、価値観及び社会組織 ⑤ランドスケープ及びシースケープの特徴のすべてを満たした上で、システムの持続性のための保全計画を作成することが課せられているこの認証のハードルは高い。それゆえに、ノミネートおよび認定された時のインパクトは大きい。これは、欧州の一つのワイン産地としての評価ではなく、伝統的なワイン産地の一つ、さらに言えば地域ブランドとしての評価と考えられるのだからその影響は大きいだろう。
 伝統を受け継ぎ、守るところは守りながら革新を伴い、地域が評価されるとなればそれはブランディングの教科書とも言える活動だ。料飲店にとっては単に味だけでなく、生産者のビジョンに共鳴できるワイン選びや多様性の理解で飲み手に新たな楽しみと学びのあるワインリストづくりを、ソアーヴェがサポートしようとしている。

 

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ソアーヴェワイン保護協会 新会長 サンドロ・ジーニ氏(当時)

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