定着から飛躍へ。プロセッコが日常を彩る選択肢に

飲用シーンを広げるプロセッコ

 プロセッコの魅力は価格的な優位性だけではない。カクテルとしてのポテンシャルを大いに秘めているのもほかの醸造酒にはない特徴だ。丹精込めて造ったワインがほかの味覚とミックスされることに好意的な姿勢を示しているワイナリーが多いというのは、ほかのワイン産地にはない特徴だと言える。

 ヴェネツィアで生まれたクラシックカクテル「ベリーニ」(Bellini)をはじめ、「ティツィアーノ」(Tiziano)や「ロッシーニ」(Rossini)などはプロセッコを用いるのが望ましい。また、国際バーテンダー協会(IBA)ウェブサイトでは「ベリーニ」のほかに「バラクーダ」(Barracuda)、「ミモザ」(Mimosa)、「オールド キューバン」(Old Cuban)、「スプリッツ」(Spritz)のレシピでプロセッコが指定されている。プロセッコDOCワイン保護協会ウェブサイトの特設ページ「Cocktail DOC」では近代的なプロセッコカクテルを掲載。バーアイテムとしてその存在を気に掛けるバーテンダー、ミクソロジストも増え始めており、「MARTINOTTI」でも今年中に20のプロセッコカクテルを発表するとしている。
 日本におけるプロセッコは今後、カジュアルなイタリア料理店からバーやカフェ、そして家庭にまで飲用シーンを広げていくだろう。

ザクロとプロセッコで「ティントレット」。その名はベリーニやティツィアーノと同じくヴェネツィア派の画家に由来する
日本では初夏の定番であり、ヴェネツィア「ハリーズバー」生まれのクラシックカクテル「ベリーニ」は桃とプロセッコ
晩冬の定番といえばプロセッコとイチゴの「ロッシーニ」。日本ではなぜか「レオナルド」の名で広まった時代がある

 

 元来、日本では売り手が、瓶内二次発酵のシャンパン製法こそが飲むべき発泡性ワインであると信じ込んできたところがある。今日のプロセッコの広がり、消費者の反応を見ていると、シャンパン方式かタンク内二次発酵のシャルマ方式(マルティノッティ方式)かはそれほど重要ではないことも分かって来た。ワインの好みを熟成に求めるのか、フレッシュさに求めるのかの違いで、タンク内二次発酵のワインを好む消費者も多く存在することに、ようやく気付き始めたのが日本の市場の姿でもある。

 日本においてプロセッコの市場が拡大するには、まだまだ課題も多い。日本が輸入しているのは200万本と、英国やアメリカ、ドイツに比べればごくわずかだ。プロセッコそのものに対する理解も一部のワインラヴァーに限られる。

 それでも日本への輸出量は増加に転じた。3月に行なわれた日本最大の食品展示会「Foodex Japan」でも新たにプロセッコの輸入を検討しているインポーターの姿が多く見られた。二次発酵の本質を理解して販売することで、シャンパーニュやカバが席巻していた日本のスパークリングワイン市場における新たな選択肢としてプロセッコは拡大の余地を多く見込めるに違いない。気軽に飲める泡として、プロセッコは確実に、日本人にとっての日常を彩るスパークリングワインの新しく確かな選択肢になろうとしている。

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