定着から飛躍へ。プロセッコが日常を彩る選択肢に

日本人は泡立つ酒がお好き

日本におけるスパークリングワインの輸入量はこの2010年からの10年で1.5倍に。世界でも7~8%ずつの伸びが今後も予想されている

 日本ではとにかく発泡性の飲料が人気だ。日本の酒類市場は長らくビール業界が支えてきたと言える。ウイスキーの「ハイボール」も古くから存在し、「角ハイボール」を機にしたハイボールの流行と定着でも分かる通り、ここでもサントリーなどビール大手のマーケティングが機能している。焼酎を炭酸で割る酎ハイなる飲みものは、近年のセルツァー市場の源流とも言え、RTD先進国としての日本の炭酸好きはかくも多くの選択肢を消費者に与えてきた。
 近年では日本酒さえも発泡性にしてしまうところも、日本人の志向を象徴していると言えるかもしれない。

 スパークリングワインについても同様のことが言える。30年ほど前は発泡性ワインを総称して「シャンパン」と呼んでしまっていた日本で、近年はシャンパーニュとヴァン・ムスー、フランチャコルタやプロセッコとスプマンテ、カバとエスプモーソの関係性をきちんと認識する愛飲家も増えた。特に長らく、日本でシャンパンと同じ製法であることを強調することで成功したカバが“デイリーなシャンパン”として成功を納め、後を追うようにフランチャコルタも日本が最大のお得意さんである。タンク内二次発酵のスパークリングワインは後塵を拝した形になっていたが、いまその市場構造に変化が生じ始めている。
 それこそが、ヴェネト州とフリウリ=ヴェネツィア・ジューリア州にまたがる北イタリアで造られる「プロセッコ」の存在だ。

プロセッコDOCの生産地域と規模(2020年度)

日本人はイタリアがお好き

 プロセッコが、世界最大のスパークリングワイン産地だということは、日本ではまだ一部にしか知られていない。そのプロセッコの中でも最大の生産区分である「プロセッコDOC」の普及と品質保護に取り組むプロセッコDOCワイン保護協会は、2020年のプロセッコDOCの生産本数が5億本を超えたと発表した。これに山岳地帯の「コネリアーノ・ヴァルドッビアデネ プロセッコ・スペリオーレDOCG」が1億2000万本ほど、そして「アーゾロプロセッコスペリオーレDOCG」の2000万本弱を加えると、プロセッコ全体の生産本数は6億本を遥かに超えて、シャンパーニュやカバの2倍に及ぶ生産量を誇る。

 日本人のイタリアへの受容性は高い。これは第二次世界大戦で同盟国だった両国の歴史とは関係なく、戦後に日本で度重なって起こったイタリアンのムーブメントによるところが大きい。現在、日本におけるイタリア料理店は8000軒とも1万軒以上とも言われている。1960年代から70年代、80年代と段階的に時代を象徴するシェフとレストランが現われ、日本におけるイタリアンのテロワールを育んできた。

  

 イタリア料理と日本料理の親和性も多くのポイントがある。南北に長い国土において、さまざまな郷土料理が存在する。日本にはうどんやそばという麺類があったことも、日本人がパスタを受け入れやすかった大きな理由だ。さらに、一部のビストロを除けば高級店が多かったフランス料理に比べ、イタリア料理は日本人の生活になじみやすいカジュアルな店が市場に浸透した。日本国内で1000店以上を展開するチェーンレストランの貢献も大きく、さらにピッツァなど専門的なイタリア料理店もバラエティ豊かだ。

 日本人の多くはここで、知らないうちにプロセッコを飲んでいた可能性が大いにある。日本のすべての消費者がワインに関する正しい知識を身に着けているわけではない。そのため多くのレストランは、プロセッコでもスプマンテでもなく、「スパークリングワイン」とメニューに表記し、結果的にプロセッコを提供していることも少なくなかった。提供する側もゲストも知らず知らずのうちにプロセッコに触れ、関与してきたことも、プロセッコを味覚的に受け入れる土壌が育まれていたと考えることができる。

 さらに、イタリアを旅したことがある日本人にとって、プロセッコは「現地で飲んだことがある」と記憶の片隅に置いている人も存在する。プロセッコ ── それは未知なる存在ではなく、聞いたことがある、詳しく分からないが飲んだことがあるという消費者も少なくないのだ。

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