多様性が魅力 世界第3位のピノ・ノワールの潜在能力にも大注目
オルトレポ・パヴェーゼ

 近年ではその潜在能力と質の高さでピノ・ネッロが大注目されている、北イタリアのワイン産地オルトレポ・パヴェーゼ。9月に同協会のディレクターとガンベロ・ロッソの編集長が来日。宮嶋勲氏とともにプレゼンテーション・セミナーとプレス・ディナーを開催した。

アペニン山脈からの冷涼な風と南北に走る渓谷 そして多彩な土壌

 オルトレポ・パヴェーゼはイタリアのロンバルシア州にある一大ワイン産地。ミラノから南に約40㎞、車で1時間弱の場所にある。オルトレポとは「ポー河の向こう」という意味で、ポー川の南側に位置することから名づけられた。ワイン産地の東西は35㎞、南北は30㎞の大きさで葡萄栽培面積は1300ha。北緯はボルドーやブルゴーニュと同じ45度。標高150m~550mの広範囲に畑は広がる。ポー川からアペニン山脈の丘陵地帯には南北にいくつもの渓谷が走っていて、様々な斜面や方角に畑は面している。土壌も石灰質、泥炭、粘土質、砂質などと多彩だ。

 

ピノ・ネッロ、リースリングに注目 伝統品種のボナルダも堅調

 オルトレポ・パヴェーゼ協会ディレクターのカルロ・ヴェロネーゼさんは「ゆえにワインも非常に多彩で多くの品種を栽培している。ピノ・ネッロ(ピノ・ノワール)、バルベーラ、ボナルダ(クロアティーナ)、カベルネ・ソーヴィニヨン、リースリング、モスカート、シャルドネ、ソーヴィニヨン・ブラン、ピノ・グリージョなど。特にピノ・ネッロは中心品種で、スティルの赤・白、ロゼ、フリッザンテ、スプマンテ、瓶内2次発酵のスプマンテなどと、様々なタイプが造られている。多様性が魅力なオルトレポ・パヴェーゼには7つのDOCG とDOCの 呼称があり50のタイプのワインが造られている。緑が豊かで古い教会や城も美しく、人が温かく、何よりもワインが素晴らしく美味しい。ワインツーリズモも近年盛んでミラノからも近いので、人生を変えてみようと思ったら、ぜひオルトレポ・パヴェーゼに来てほしい」と笑顔で伝えた。

ブルゴーニュ、シャンパーニュに次ぐ一大産地 土壌や微気候に合わせ植栽

 さらにガンベロ・ロッソ『ヴィーニ・ディタリア』編集長のマルコ・サベリコさんも
「近年では特にピノ・ネッロは質が高く世界的にも注目されている。オルトレポ・パヴェーゼのピノ・ネッロの生産はブルゴーニュ、シャンパーニュに続いて、オレゴンと並ぶ世界3位の生産量。コスト・パフォーマンスにも優れ、非常に潜在能力も高い。若いうちからよく開いて生き生きとした瑞々しい果実感が特徴となる。現在土着品種と国際品種を合わせても約200種類もの葡萄が植えられているが、近年特にオルトレポ・パヴェーゼのワインが非常に良くなったのは、有機栽培の実践、多彩な土壌や微気候に合わせて、葡萄品種の適性を熟慮して栽培がなされるようになったことなども要因にある」と語った。

ベルルッキやマージ社も参入 注目の産地に

 

ワイナリーは大手協同組合から職人的な小さな生産者まで様々だが、近年ではオルトレポ・パヴェーゼのポテンシャルの高さに注目し、ベルルッキやマージ社などの大手有名生産者もワイナリーを購入しワイン造りに参入してきているという。

当日のセミナーではピノ・ネッロの瓶内2次発酵も含むスプマンテ3種、リースリングの白、クロアティーナ、バルバルベーラ、ピノ・ネッロの赤3種と多彩なワインを披露した。またディナー・セミナーも開催され、表参道のイタリアンレストランEtruschiエトルスキにて素晴らしいモダンイタリアンと8種のワインとの競演も楽しんだ。

オルトレポー・パヴェーゼの代表ワインをいくつか紹介してみよう。

LA TRAVAGLINA
Oltrepó Pavese DOCG Metodo Classico Pino Nero Rose Julliae2011(輸入元:MONAKA)

家族経営のワイナリーで職人的なワインを生む生産者。これはピノ・ネッロ100%で120か月の瓶内2次発酵の後、昨年デゴルジュマン。10年以上をかけてリリースした傑出したロゼのスプマンテ。オルトレポ・パヴェーゼのピノ・ネッロの素晴らしさを知ってほしいと15年前から協会がロゼの瓶内2次発酵のスプマンテに力を入れ、現在25%を占める。スケールが大きくて複雑性もあり、豊かなミネラル感としっかりとしたボディがあり、いまだなおフレッシュで熟成香が出始め飲み頃に入っている。

ISIMBARDA
Oltrepó PaveseDOC Riesling Superǐore Vigna Martina Le Fleur2021(輸入元:アビコ)

ガンベロロッソのトレビッキエーリを獲得したリースリング。リースリング栽培の伝統もあるオルトレポ・パヴェーゼには二つのリースリングがあるという。一つは現在多く植えられていて骨格がしっかりとして瑞々しい「リースリング・レナーロ」と、もう一つは以前に多く植えられていたリースリング・イタリコ。このワインはリースリング・レナーロ100%でトロピカルフルーツや白い花のような香り、丘陵地帯の砂と粘土質土壌由来のミネラル感を備えている。

CASTELLO DI LUZZANO
Bonarda delle’Oltrepó PaveseDOC Sommossa2021(輸入元:パッション・ワーク・コーポレーション東京)

ボナルダはオレトレポで一番飲まれている赤ワインで、固有品種でありロンバルディア州ではボナルダと呼ばれているクロアティーナ種100%。クロアティーナはタンニンが豊かで、微発砲性で、酸もしっかりしていて、黒苺などの森の果実の香りや少し青いハーブのトーンのワインを生む。素朴で郷土料理のサラミや肉料理とよく合う。心地よいタンニンが脂を流してくれ、イタリアンだけでなく中華料理にもよく合いそう。当日のディナーではホロホロ鳥のとキノコのラグーパスタと供された。

CA’ DI FARA
Pinot Nero dell’Oltrepó PaveseDOC 2021(輸入元:メイワ)

白亜の大きな石灰岩が露出する石灰質土壌の畑から生まれるピノ・ネッロ。ゆえに、生き生きとした躍動感のある果実感と美しい酸、フレッシュで繊細でエレガントな風味を備える。家族経営のワイナリー。明るい果実感のあるオルトレポ・パヴェーゼの伝統的スタイル。

CORDERO SAN GIORGIO
Pinot Nero dell’Oltrepó PaveseDOC Riserva Partu 2020 (輸入元:フードライナー)

2022年のガンベロロッソにてトレビッキエーリを獲得。樽で数年熟成させたリゼルヴァのスイタイルで野心的なピノ・ネッロのワイン。非常に気品があり雄大さとエレガンスを合わせ持つ。3年前に設立された新しいワイナリーで元ヴィエッティの醸造家が造る。モダンスタイルでオルトレポ・パヴェーゼのピノ・ネッロの未来を実感するワイン。いちぼの和牛炭火焼のバルサミコ風味の肉料理と非常に好相性だった。

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