海と山、風のワイン ── アブルッツォを知ればイタリアがより近くに感じられる
20ある州すべてでワイン造りが行なわれているイタリアは、おのおのがご当地の自慢のワインに誇りを持ち、作り手も飲み手も地元愛にあふれている。
東西南北、土着品種の種類も個性も豊かなイタリアワインの世界が、ウィズコロナの時代に先駆けてその存在を世界にアピールし始めた。その急先鋒であり、赤ワインの最大の産地の一つが、アブルッツォ州だ。
州都はラクイラ、最大の都市はペスカーラ、ワインの83%はキエーティ
長靴をかたどったような国土の“ふくらはぎの下”辺りと言えば良いだろうか。“すね”の辺りにあるローマ、フィウミチーノ国際空港から260kmあまり西、アペニン山脈を越えてたどり着くのは、東岸アドリア海に臨む州最大の都市、ペスカーラだ。一方、アブルッツォは州都を高地のラクイラに置く。ここはアペニン山脈の盆地にできた標高700メートルほど街で、イタリアの州都としては最も高い位置にある。さらに、ペスカーラの南のキエーティは人口にして州最大の県であり、生産量にして州の83%以上のワインがここで造られる。これに北部のテーラモと合わせた四つの県で構成されるのがアブルッツォ州だ。
州の中央、アペニン山脈で最も高い山塊「グランサッソ」に抱かれたここは、ワイン大国イタリアの中でもとりわけ親しみやすいワインを送り出している場所として、これまで日本でも少しずつ認知されていた。
イタリア最大級の赤ワイン産地
ワイン造りに目を向けて見ると、州内のブドウ栽培面積は3万3000ha、年間で35万キロリットルのワインが造られており、これはイタリアの州ごとのワイン生産量で3位に値する。ブドウの栽培者は6000軒を超え、35の協同組合と250以上のワイナリーが存在する。
州内の原産地呼称はDOCGが一つ、DOCが八つ存在し、代表的なものが白ワインではトレッビアーノ・ダブルッツォ、近年の世界的なロゼワイン人気とともに伸びているのがチェラスオーロ・ダブルッツォだが、アブルッツォのワインの旗印はモンテプルチャーノ・ダブルッツォに違いない。10万キロリットル以上のワインが生まれる同州のDOCワインのうち、モンテプルチャーノの生産は80%に上る。全体の栽培面積の半分以上となる1万7000haでこの種のブドウが栽培され、本数にして1億本以上。DOCワインとしてはキアンティとともに最も生産量の多いワインの一つだ。