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ユネスコ世界遺産認定も近い
キアンティ・クラッシコの魅力と新情報を伝えるプレスイベント開催 

 6月にキアンティ・クラッシコ協会主催のプレス・イベントが開催された。協会からマーケティング・コミュニケーション・マネージャーのシルビア・フィオレンティーニさんが来日、キアンティ・クラッシコ・アンバサダーの宮嶋勲氏が講師となり、その豊かな魅力と近年の動向を紹介。和の食材を豊富に使ったザ・ペニンシュラの料理との幅広いマリアージュも披露された。

丘陵地帯の森に囲まれた葡萄畑 豊かな自然環境に溶け込み55%が有機栽培

 キアンティ・クラッシコのワイン生産地は、イタリアのトスカーナ州にあり、フィレンツェからシエナにかけての7万haの丘陵地帯に広がる。生産地は細長く、北から南までは47㎞、西から東までは21㎞。フィレンツェからシエナまで車で縦断すると約1時間の距離にある。

「キアンティ・クラッシコ地域は面積の65%が森で、葡萄畑は森に囲まれて点在。森には野鳥や益虫や多彩な動植物が生育し、生物多様性が存在することで畑は守られ、質の高い葡萄栽培が可能となっている。豊かな自然環境に溶け込んで葡萄栽培が行われることから、現在葡萄栽培面積の55%で有機栽培を実践している」とフィオレンティーニさんは伝えた。

1ha当たりの収量はイタリアでは一番低い 凝縮感ある味わいと美しい酸

 さらに講師の宮嶋さんは「キアンティ・クラッシコ協会が1923年に生まれた当初は、協会メンバーは300ほどだったが、この100年で500以上となった。歴史と伝統を守りながら近代的起業精神も両立させ、非常に質の高いワインを生産。特に1970年代からは量より質を徹底して目指したワイン造りに集中し、現在1ha当たりの収量はイタリアでは一番低い。またこの20年で70%の葡萄畑が改植され、約3億ユーロを投資して畑の改革を行ってきた」という。

2021年よりテロワールを明確に表現する11区画をラベルに表記

 キンティ・クラッシコは、下からアンナータ、リゼルヴァ、グランセレツィオーネの、3つの格付けに分かれている。特に2014年に新たに生まれたグランセレツィオーネは、熟成期間が30カ月以上、自社畑の葡萄に限定、アルコール度数13%以上と定められ、より葡萄が厳選されて熟成期間が長く長期熟成にも向くスタイルになった。

 そして、さらに2021年には、このグランセレツィオーネに、UGA(UNITA GEOGRAFICHE AGGIUNTIVE)という11の区画を認定するカテゴリーが生まれた。今後以下の11の区画名をラベルに記載できるが、これは、ワインのアイデンティティの違いをより明確に表現できるものとして、世界的にも画期的な革命ともいえる。

  • Castellīna(カステッリーナ)
  • Castelnuovo Berardenga(カステルヌオーヴォ・ベラルデンガ)
  • Gaiole(ガイオーレ)
    Greve(グレーヴェ)
  • Lamole(ラモーレ)
  • Montefioralle(モンテフィオッラッレ)
  • Panzano(パンツァーノ)
  • Radda(ラッダ)
  • San Casⅽiano(サン・カッシャーノ)
  • San Donato In Poggio(サン・ドナート・イン・ポッジ)
  • Vagliagli(ヴァグリアーグリ)

豊かな酸とミネラル感 肉にも魚にもよく合うガストロノミックなワイン

 当日は、日本の食材を多彩に使った料理に6種のキアンティ・クラッシコ・グランセレツィオーネをマリア-ジュ。宮嶋さんは「キアンティ・クラッシコの良いところは食事に合うガストロノミックなワインであること。生産地はアペニン山脈に近く、比較的涼しいテロワールにあるためワインに酸とミネラルがしっかりと存在する。そのため赤ワインであっても魚料理にもよく合う」と話した。

キアンティ・クラッシコ地域は1980~90年代にクローン選別のプロジェクトがあり、クローンを厳選し、各クローンに合った土壌や仕立てを研究。そこで植え替えした葡萄が現在樹齢20~30年くらいとなり、アンナータにおいてもちょうどいま、素晴らしいワインが出てくる時期になっているという。今回はグランセレツィオーネの試飲だけだったが、ほかの階級のワインにもぜひ注目してほしい。

 

個性も異なる多彩なグランセレツィオーネ6

①CECCHI (CASTELLINA)
Chianti Classico Gran Selerione Villa Rosa 2019
チェッキ キアンティ・クラッシコ グランセレツィオーネ ヴィッラローザ2019

サンジョヴェーゼ100%。ヴィッラローザは西向きの標高の高く岩の多い土壌であるため、岩を感じるミネラル感を備え余韻が長くタンニンも緻密。陰影のあるエレガントなスタイル。

②CASTELLO DI FONTERUTOLI (VAGLIAGLI)
Chianti Classico Gran Selerione Vicoregio36  2019
カステッロ ディ フォンテルート キアンティ・クラッシコ グランセレツィオーネ・ヴィコレージオ2019

ヴァグリアーグリの区画はシエナに一番近い最南にあり、日当たりのよい斜面にあるため、瑞々しくもグラマラスな果実感をもつ。前面から果実味がボンとくる感じ。500ℓのフレンチオークを使用し18カ月熟成するため、ボディもしっかりと厚みもある。前菜の国産牛の低温調理タルタル仕立てにしっかりと調和していた。

③CASTELLO DI VOLPAIA (RADDA)
Chianti Classico Gran Selerione Coltassala 2019
カステッロ・デ・ヴォルカイア  キアンティ・クラッシコ グランセレツィオーネ コルタッサーラ2019

砂質の土壌で標高500mの高さに畑があるため、酸も豊かで瑞々しい果実感がある。ステンレスタンクで発酵、フレンチオークで24か月熟成。モダンスでエレガントなスタイル。美しい酸が魚料理であるオマール海老のジロール茸のラビオリとも好相性。

④RICASOLI (GAIOLE)
Chianti Classico Gran Selerione Castello di Brolio 2019
リカゾーリ キアンティ・クラッシコ・グランセレティオーネ カステッロ ディブローリオ2019

標高500m、キアンティ・クラッシコの南東で石と砂の混じった石灰質土壌。ガイオーレらしく、酸が豊かで骨格がしっかりあり、舌をきゅっとつかむようなタンニンが余韻に残る。小鴨のロティ マデラソース ズッキーニとパンツェッタのソテーのメイン料理と好相性。

⑤FONTODI  (PANZANO)
Chianti Classico Gran Selerione Vigna del Sorbo 2019

パンツァーノは特に1980年代から有名になった地区で、550mの高い標高にある。ミネラル感や酸の豊かさ、果実の美しさ、タンニンの滑らかさなど、すべてにおいてレベルが高く、各要素が見事に調和している。

⑥CASTEL DI MONSANTO ( SAN DONATO IN POGGIO)
Chianti Classico Gran Selerione Vigna il Poggio 2018

2018年は天候に恵まれた良年であり、まだ熟成が必要なヴィンテージ。厳格でややスパイシーな風味が特徴。サンジョヴェーゼ95%、コロリーノアンド3%、カナイオーロ2%。風格と威厳に満ちた正統派スタイル。

 なお最後に。キアンティ・クラッシコ地区は2400年前のエトリア人の時代からワイン生産が始まり、1716年にトスカーナ公コジモ3世がその生産範囲を規定。これが世界史上初めての原産地呼称Denominazione ⅾ’Origineとされている。以来300年が過ぎ、改めて歴史的価値を付加すべくユネスコ世界遺産申請に動き始めている。認定されればイタリアでは3番目のワイン産地での認定となる。

画像&地図提供:キアンティ・クラッシコ協会

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