ソアーヴェの新たなアイデンティティ
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ソアーヴェワインが日本市場で再ブレイク

日本市場において確固たるポジションを得ているソアーヴェワイン

 日本におけるイタリアワインが隆盛とも飽和とも言われている中で、ソアーヴェワインがにわかに販売量を増やしている。2013年から日本で行なわれているバイ・ザ・グラス キャンペーンも順調に参加店を伸ばしているばかりでなく、5年目に入った昨年も販売量は22%増加、参加店も前年から41%の増加と勢いは顕著だ。
「ソアーヴェワインは日本市場に受容されており、このグラスワインでのキャンペーンによって消費者の関心の高まりも把握できます。この5年間、レストランと消費者の両方に向けて良い影響をもたらすことができました」
 ソアーヴェワイン保護協会のディレクター、アルド・ロレンツォーニ氏は日本市場におけるさらなる浸透に自信を見せる。
 そのソアーヴェワインが歴史や土壌を背景に、循環型社会への対応と世界農業遺産へのノミネートという新たなカードで独自のポジションに立つ局面にある。

四つの土壌からなる四種のソアーヴェ

 ソアーヴェは、ヴェネツィアから西へ90㎞、ヴェローナからは東へ30㎞のところにある、古代ローマ時代にはすでにそのワインの品質が高く評価されている地域だった。畑の向きや気候、土壌構成とワインの特徴を結び付けるポイントを解明するために、ソアーヴェの生産者協会(ソアーヴェワイン保護協会)は、現地のミクロクリ―マ(微小気候)の研究を行なっており、それぞれの地域で造られたワインは、研究と分析の対象として専門家のグループによる試飲が繰り返し行われている。ギリシャを起源とするブドウ品種だと言われているガルガーネガを70%以上使用し、トレッビアーノ・ディ・ソアーヴェもしくはシャルドネを30%以下、ほかアロマティックでない認定白ブドウを5%以下の割合で生産される白ワインがソアーヴェの基本であり、イタリアにおけるワイン法が制定された1968年にDOCに認定されているのがソアーヴェDOCだ。その中で古くからワイン造りが行なわれていたソアーヴェ・クラッシコDOCは、同じソアーヴェでも似て非なる存在とも言われる。2001年にDOCGに認定されたソアーヴェ・スペリオーレDOCGは地域の特徴をもっとも表わしているワインで、市場に出る前に最低2年の熟成が必要。アルコール度数は12.5%以上であることが求められている。これに1998年にDOCG認定されたデザートワインのレチョート・ディ・ソアーヴェDOCGと、ソアーヴェには四つの顔がある。

ソアーヴェの生産地域図(画像をタップするとPDFファイルでご覧になれます)

歴史が織り重なる土壌とスタイル

 ソアーヴェの個性はその土壌と歴史が雄弁に物語っている。6000万年前、地球上に霊長類が現われたころは海底にあったというのが丘陵地を含むソアーヴェであり、ミネラルが豊富な土壌はこのころに由来している。その歴史に育まれた類まれなソアーヴェの土壌は四つないし五つに大別され、同じソアーヴェとは思えないほどのバラエティを見せる。

ソアーヴェの土壌マップ(画像タップで拡大)

 DOC、DOCGのエリアとともに土壌を把握するとソアーヴェは会話が広がる。エリアの北東部の丘陵地、主にスペリオーレとレチョートのDOCG、そして一部のDOCを産するエリアは黒い火山性土壌、玄武岩だ。その西側、アニョ川の対岸は同じく火山性土壌だが赤土で、これは玄武岩質の堆積物が酸化したものと言われている。このエリアは主にソアーヴェ・クラッシコの産地に当たる。そしてさらに西部、二つのDOCGと一部のDOCが造られる箇所では黄土色の石灰岩による層状の土壌が形成され、保水性は低いが土中の活性炭酸カルシウムは最も高い。そしておおむねソアーヴェDOCが造られる平地では保水性が程よく、水はけのよい白い石灰岩の土壌が広がる。そしてアニョ川流域は流水が運んだ石灰岩ではない沖積による土壌が構成されている。DOC、DOCGによる規定と造り手の信条、そして土壌や気候により香りも味わいも異なるソアーヴェをかつての日本のワイン市場におけるイメージのまま画一的に見るのはあまりにも惜しいというものだ。

ソアーヴェの土壌のサンプル。その違いは色合いとともに鮮やかで、ワインの個性にもそれぞれの特徴が如実に表れる

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