世界一愛されるスパークリングワイン「プロセッコ」をオンリストすべき七つの理由(後編)
2018年の総生産量は4億6400万本。フランスのシャンパンやスペインのカバを大きく引き離し、世界で最も多く飲まれているスパークリングワインがある。イタリア最大のワイン産地でもあるヴェネト州とその東、オーストリアとスロベニアに接するフリウリ・ヴェネツィア・ジュリア州で造られる「プロセッコ」だ。
➎ プロセッコは“三方善し”である
プロセッコの大きな魅力の一つは、コストパフォーマンスの良さだ。マルティノッティ氏による二次発酵の発明と高い生産効率によって生み出されたプロセッコは、シャンパンやイタリア北部、ロンバルディア州で造られるフランチャコルタなど、瓶内二次発酵のスパークリングワインと比較した価格的優位性を持つ。
レストランでのスターター、あるいはバー・ラウンジにおけるスパークリングワインそしてカクテルは、必ずシャンパンであるべきだろうか。また、瓶内二次発酵である必要があるだろうか。提供する時間帯やシーン、用途に応じて提供する“Bubbles”を使い分けるならば、そこにプロセッコが入る余地も多分にある。ゲストにとって日常的に飲用できるスパークリングワインであるならば、それは料飲店にとっても使いやすいものだ。
例えば日常的に高価格帯のシャンパンが販売できているレストランなら検討の余地はないかもしれない。しかし、バイ・ザ・グラスでいくらかの歩留まりに悩む店舗や、販売力を高めたいと考える店舗・施設にとっては、味わいもストーリー性も豊かなプロセッコは一つの選択肢となり得る。日常にある歓喜とともに、プロセッコは料飲施設の救世主となる得る存在なのだ。
➏ プロセッコは常に先進的だ
長所を伸ばすためなら仕組みも変える。プロセッコにはそんな気概も感じられる。身近に楽しめるワインとして評価されている中、生産者の技術革新があることにも注目したい。
プロセッコにおける近年のトレンドワードの一つが「シングルファーメンテーション」だ。設備面でのハードルがあるため、まだ数社のみが採用している状態だが、これはブドウを圧搾したジュースを氷温貯蔵し、一度の醸造でスパークリングワインを仕上げてしまう造り方。フレッシュでフルーティーなワイン造りを推進する中で生まれた、ベースワインを造らずに、果汁からダイレクトにワインにする方法である。果実味と鮮度がしっかりと感じられ、味わいにもグレーラの甘酸の輪郭がはっきりと現れる、これからのプロセッコである。
さらに、ほかの生産地同様に、オーガニックタイプのワイン造りも各社が手掛け始めている。既存のブランドに加えてBIO認証を受けたワイン造りを行なうなど、親しみやすい味わいのプロセッコにワイルドさが加わったアイテムも注目していきたい。
➐ プロセッコは自由だ
プロセッコには“あってはならないこと”の規定もある。例えば缶入りおよび樽出しのワインはプロセッコDOCの規定外だ。これらに関する監視や抑止もプロセッコDOC保護協会の重要な活動の一つで、「プロセッコ」を名乗って流通している規定に満たない商品や、プロセッコに類似した表示のフェイク品については、ブランドを損ねる存在として警告を発したり、罰則を科す場合もあるという。
また、現在はまだ規定外だが、ロゼタイプのプロセッコの生産が早ければ来年からスタートすると報じられている。すでに生産者の多くがロゼのスパークリングワインを生産している背景もあり、また4月に行なわれるイタリア最大のワイン展示会「VINITALY」でも、ロゼプロセッコの欧米市場からの期待について議論が行なわれた。
そして、こうした規定のもとに生まれたプロセッコの楽しみ方は自由だ。ワインであるにもかかわらず自由に創造できるのが、プロセッコの魅力の一つだ。桃とスパークリングワインのカクテルとして広く知られる「ベリーニ」はプロセッコがベースだ。ヴェネツィアのハリーズ・バーで、1948 年に当時のオーナー、ジュゼッペ・チプリアーニ氏(1900- 1980)がルネッサンス期の画家、ジョヴァンニ・ベリーニの展覧会の際に創作したと言われている。また、イチゴを用いた「ロッシーニ」、ブドウと合わせる「ティッツィアーノ」など、クラシックカクテルにはプロセッコベースのものが各種存在する。
生産者や協会がカクテルに対してポジティブな姿勢を示すのも、プロセッコDOCの特徴である。店舗で仕入れているフルーツや野菜、ハーブやスパイスを使ってカクテルにしてみることをぜひ勧めたい。さらにその価値を高めるなら、おのおのの地域性が現れる素材や器づかい、ネーミングなどの工夫を施して、ドリンクメニューはより親しみやすく彩られていくはずだ。