イタリアのワイン産地 コネリアーノからヴァルドッビアデネの丘陵地帯がユネスコ世界遺産に
イタリア55番目の世界遺産
ユネスコ世界遺産登録の採否を決める第43回世界遺産委員会が6月30日から7月10日の間、アゼルバイジャンの首都バクーで行なわれ、イタリア北部ヴェネト州の「コネリアーノとヴァルドッビアデネの丘陵群」が世界文化遺産として認められた。
この地域は、急傾斜の丘陵、チリオーニ(ciglioni)と呼ばれる狭く小さな棚段のブドウの木と背景にある森、小さな集落、農地などの文化的な景観が特徴。17世紀ごろからこのチリオーニを利用し、斜面に平行あるいは垂直に植えられるブドウ畑の並びで独特な景観が造られた。19世紀にはベッルッセラ(Bellussera)という菱形に仕立てる葡萄栽培の技術が発達し、景観の美的特徴に大きく貢献した。険しい土地環境を何世紀にもわたって克服して形成され、プロセッコワインの生産地としても知られている。
「世界遺産認定はゴールではなく、コネリアーノとヴァルドッビアデネという地域の文化的、芸術的、農業的遺産を強化するための重要なステップ」とコネリアーノ ヴァルドッビアデネ プロセッコ スペリオーレ ワイン(プロセッコ スペリオーレDOCG)保護協会のインノチェンテ・ナルディ会長は語る。
前回「不登録」勧告から逆転
世界遺産認定までには10年を要した。前回の第42回世界遺産委員会では、ほかのワイン産地である世界遺産との異なる価値が示されていないことなどから「不登録」も勧告された。しかし、審議では登録を支持する意見も出され、最終的に「情報照会」決議に落ち着いた。ユネスコの諮問機関である国際記念物遺跡会議(ICOMOS)は今回の再推薦に対して登録を勧告。世界遺産委員会は「他地域では見られない小さな階段状の葡萄棚が複雑な地形に合わせて張り巡らされている風景が端的な文化的景観である」と評価した。
プロセッコ スペリオーレDOCG保護協会では昨年に行なわれた同協会のワインを世界に向けて推進するイベント「ヴィーノ・イン・ヴィッラ」でも世界遺産認定による経済効果や社会貢献性に言及しており、この時にもナルディ会長は「世界遺産によってこの地域の景観や歴史的な背景とともに、プロセッコ スペリオーレDOCGワインの素晴らしさが伝わることを望む。そのために守らねばならないことと、より強く啓もうすべきことの両輪をもって取り組んでいきたい」と思いを語っていた。
今回の世界遺産委員会ではこの地域を含む文化遺産24件、自然遺産4件、複合遺産1件の計29件が登録され、世界遺産の総数は1121件となった。