イタリア・ラツィオ州の土着品種の魅力を伝える。チンチナート社のワインを披露

イタリアワインの魅力のひとつには土着品種の多彩さがある。その地域に古くから根づき脈々と受け継がれて栽培してきた土着品種が、数多くありその土地のテロワールを如実に伝えている。最近では古代から受け継がれた土着品種を大切にし、ブレンドせずに100%で造る生産者も増え注目を集めている。12月にイタリアのラツィオ州より、生産者チンチナートCINCINNATOのマーケティングディレクターで農学博士のジョバンナ・トリソリーオさんが来日。プレゼンテーションを行い、同社が栽培するベッローネやチェザネーゼなどの土着品種からの素晴らしいワインを披露した。

白葡萄ベッローネ、黒葡萄チェザネーゼ  有機栽培由来の美しい果実感

チンチナート社はローマから南東に50㎞、歴史ある街コーリに1947年に設立された生産者協同組合。現在104の組合員で構成されている。280haの畑を所有。生産するワインは白が70%で、ベッローネ、グレーコ、マルヴァジーアの白葡萄を栽培。黒葡萄はチェザネーゼ、ネーロ・ブオノ、モンテ・プルチアーノを栽培する。

 これらの土着品種を次世代に繋ぎ守るため、自然保護への意識も強く、すでに1990年代からオーガニック栽培を行い、2003年には認定を取得。現在100haの畑がオーガニック栽培に取り組んでいる。さらに、ボトルの軽量化やラベルの紙質の厳選、エネルギーの再生など、サステイナビリティにも積極的に取り組んでいる。

火山性土壌と海と山からの風が吹き抜ける好環境

 コーリの街は古代ローマから存在した歴史があり、3つの小さな神殿遺跡が今も残る。そしてチンチナートのワイナリー名は、紀元前430年にローマから移り住んで農業を始めた貴族の名前から由来している。

 またコーリの街は葡萄栽培にも恵まれた気候と土壌を備えている。海から20㎞内陸で、背後には山脈があり、それゆえ海と山からの涼風を受け、ワインはフレッシュな酸と美しい果実感を備えたエレガントなスタイルとなる。標高250mの日当たりのよい丘陵地帯。また土壌の表土はソアーヴェと同じ火山性で底土は石灰質であるため、ミネラル感も豊かなワインが生まれるという。

フードフレンドリーで伸びやかな風味 スプマンテも秀逸

当日紹介したワインは6種。いずれも固有品種100%で造られ、葡萄の個性と美しい果実感を感じる秀逸なワインばかり。凝縮しすぎず、樽に頼らないピュアな果実味を感じる伸びやかなワインは、モダンでいてその土地のテロワールを十分に感じさせてくれた。当日はリストランテ・アクアパッツァの日高オーナーシェフによるイタリアンとワインとのペアリングディナーも饗された。ワインは非常にフードフレンドリーで完璧なマッチング。その一部をご紹介する。

コーリ・ブリュット・ディ・ベッローネ・スプマンテ 

葡萄品種:ベッローネ100%

ベッローネの土着品種は、酸が豊かでしっかりとしていて、スーパークリングワインにも最適であるという。酸を保つために8月末の早期に収穫。3~6カ月アウトクラーヴェで発酵熟成。「ベッローネはフラスカティのブレンドにも使われる固有品種だが、旨味がありミントのハーブのアロマをもち、時間とともにピーチなどの果実香が現れる。今まで単独品種で造られたことがなかったが我が協同組合では絶対に美味しいワインができることを確信してチャレンジしてみた」とショヴァンナさん。太刀魚のカルパッチョととても好相性だった。

アルジェオ ラツィオIGP 2021

葡萄品種:チェザネーゼ100%

有機栽培の黒葡萄チェザネーゼ100%使用。チェザネーゼはラツィオ州で最も知られている黒葡萄品種だが「栽培地域の気候風土によって個性が異なるワインが生まれる。海に近い我が畑ではチェリーなどのフルーツ香りが特徴。タンニンは豊かだがきめ細やかで余韻も美しい」

ふくよかなアンコウのフリットやパンチェッタのパスタとよく合い、魚にも肉にも合う守備範囲の広さを感じさせた。

レリオ ラツィオIGP 2020

葡萄品種:ネーロ・ブオノ100%

「ネーロ・ブオノはコーリの町の周辺で3社しかワインを造っていない貴重品種。皮が薄いのが特徴で育てるのに難しいが、海と山からの風が吹き抜け風通しのよいこの地域によく根づいた」アールグレイの紅茶や森の下草のような香りがあり、深みと気品を備えた風味。ローズマリー風味の焼いた豚肉のポルケッタの脂身と非常に好相性だった。

主催:CINCINNATO
運営:SOLOITALIA

関連記事一覧